照射済燃料実験

  原子炉で長期間使用された燃料では被覆管の腐食や燃料ペレット内での核分裂生成物の蓄積などが生じています。そのため、未照射燃料よりも破損しやすい可能性が当初より懸念されていました。そこで、実際に原子力発電所で使われた燃料を取扱うための施設改造を行い、照射済燃料の破損限界を解明する実験を1989年に開始しました。
 照射済燃料は強い放射能をもつため、遮へいされたホットセル内で遠隔操作にて取扱う必要があります。また、安全性を高めるために実験カプセルは二重構造としていますが、その組立てやセンサー類の取付けも遠隔操作で行います。これらは、高性能の設備と高い技術を備えたスタッフにより初めて可能となりました。
 照射済燃料実験により、長期間使用された燃料(高燃焼度燃料)では未照射燃料とは全く異なるメカニズムで破損が起こること、また、どのような条件でその破損が起こるかが明らかになりました。その研究成果の一部は、既に日本の安全基準に反映されるとともに、世界的にも貴重なデータとして参照されています。
 現在取り組んでいる課題は、発電用原子炉で燃料が破損に至る条件をより高い精度で評価すること、また、これまでに構築してきた反応度事故時の燃料破損に関するデータベースを拡充することです。
 従来の実験カプセルでは室温しか対応できませんでしたが、発電用原子炉の運転温度を達成できる新型カプセルを近年開発しました。このカプセルを用いて、実際の原子炉により近い条件で破損限界データの取得を行っています。また、燃料の使用期間や燃料の種類という観点でデータの範囲を拡げるために、より長期間使用されたウラン燃料や発電用原子炉で使用されたウラン-プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)を対象とした実験を行っています。
 

照射済燃料の破損例